どうするのがよかったのかな
、と思う事がありました。
ドア口で
「向こうから歩いてくるお爺さんが、
時計屋はどこにある?と
みんなに聞いているから、
迎えに行ってあげて。」と、
通りがかりのご婦人から
声が掛かりました。
外に出て見れば、駅のむこうの方から
杖をついてゆっくりと進んでくる人が。
「時計屋でーす!!」とそばに行くと
ニッコリとするお爺さん。
杖をつきながら
転ぶか心配な足取りでしたが
ゆっくりと歩いてなんとか
お店に到着しました。
ポケットに
無造作に入っていたのは、
バンドのピンが外れてしまった
腕時計。
修理が出来ると言うと
嬉しそう。
座ってお茶を出しながら
会話をした時に、
あれ?と
思いました。
「お父さん、近くに住んでるの?」
ほやね、あっこにいたかなぁ
「お父さんの住所はどこ?」
あー、どこやったかなぁ
「お名前は?」
あーっと・・・
きっと家族に言わずに
一人で出てきてしまったんだ
、と思いました。
どこかに名前があるはず
、と探すと
時計の裏蓋に
名前が書いてあり、
杖に
住所の札がついていました。
健康な人でも遠いと思う距離の住所から
山を越えて歩いて来たんだろうか。
「おうちまでタクシーで
帰るんでもいいですか?」
、と尋ねても
ニッコリするだけ。
事情を説明しても
乗せてもらえないかもと思いながら、
近所のタクシー乗り場まで
一緒に行きました。
タクシーの運転手さんからも
お爺さん、色んな事を聞かれながら、
「とりあえず送るからね。」
、と出発していきました。
お財布から修理代金の
550円をもらった時に、
来店時間や修理の内容、
タクシーで帰宅までのメモを書いて
お財布に入れました。
警察に
電話した方がよかったのかな、
どうするのがよかったのかな
、と思った出来事でした。