自分と同年代位のご姉妹が
ご来店されました。
ゴツゴツして擦り減った
印台の指輪を出して、
「父の指輪を7つに分けたいんです」
、と。
この指輪を見て、
着けていたお父様はきっと
大きくて、
しっかり家族を支えてきた方
なんだろうなと想像しました。
だからこそ、
亡くしてしまった悲しみは
とても深いだろうと。
🍀
宝石がのリモデルは
色々な事が出来るからこそ、
一番理想に近い形にして
お渡ししたい。
最初にお尋ねしたのは、
「この指輪のプラチナ地金
【そのもの】を使って、形を変えたいのか」
PT900の刻印リングだから
1000分の900の部分はプラチナ。
だけれど
1000分の100の部分は
その他の地金。
古かったり
どの国から入ってきたか
分からないものは、
火をかけた時の煙が有害で
毒ガスマスクをして
加工をすると聞いていて、
工房の方のリスクを考えると
受けたくない。
だけど
思いは受け止めたい。
よく話し合って、
地金を
潰れた真珠のように丸めて
7つに分け
丸冠を付けてチェーンを通して
ペンダントトップにするのが
工賃が安いと踏み、
見積もりを取ることにしました。
🍀
そしてもう1つの方法は、
その大きくて重い指輪を
日本堂が買い取って現金を渡し、
新しい宝石を買うこと。
これもお父様の指輪が
姿を変えたものだ、とお伝えしました。
指輪を現金にして、
それを7つに分配して買えそうな宝石は
限られているけれど、無くはない。
思い付いたのは
【Thanks Ring】
お金のない若者たちが、
恋人や両親に思いを伝え合うために
ギリギリの応援価格に設定してある、
日本堂のオリジナルリングです。
おじいちゃんが大好きだった
息子さんたちには、
おじいちゃんの名前が彫ってある
指輪をもらったら
宝物になるんじゃないかと。
🍀
実物のThanks Ringを
手に取った姉妹は
「私、コレがいい!!」
「私もコレが欲しい!!」
パッと顔つきが明るくなって
はじめて笑顔になりました。
今日はここまでに。
ご家族で相談して
いちから決めることにして
預かるはずの指輪を
返却。
見積もりも
キャンセルしてもらいました。
🍀
そんな事があったからでしょうか。
夕方。
ゼクシィフェスタに出展した
指輪の受け取りのために
一人ドライブしていた時に、
ふっと父を思い出したら
涙が止まりません。
この感情を
どこにしまっていたんだろうと
思うくらい。
ご姉妹が戻ってみえたら
気持ちに寄り添って
接客しようと思っています。