身代わりの器

毎週、お茶のお稽古に
通っています。

実家の父を亡くして
「もう一度お稽古を始めよう」
、と思ったから

再開してかれこれ
10年にはなるのかな。

笑顔で迎えてくださる
母世代の先生は

いつも着物姿で
シャキッとしていて
穏やかでお元気。

ところが前回

「体調が悪いから」と、初めて
お稽古をお休みにされました。

心配したけれど、今週は
マスク姿でお出迎えくださって、

お顔を見て
ホッとしました。

聞けば、

インフルエンザとコロナの
ワクチンを接種した次の日から

高熱が続いて
寝込んでしまったそう。

まだなんとなく調子が戻らない
、と鼻声でした。

それでも普段通りの
お稽古ができて、

ふと机を見ると、
割れた菓子器が・・・。

お煎茶のこぼしに使っていた
白磁の器が
綺麗に大きく割れています。

どうされたのかを
聞くと

それがね、不思議なのよ、誰も
入らないこの部屋で、

置いてあっただけなのに
割れていたのよ、

水が入っていたから
畳が濡れて大変だったわ

こんなことって、ある?

先生が体調を崩され
心配した姪っ子さんが

しばらく
家に泊まってくれたのだとか。

回復してきて
お茶でも点てようと

2人でお稽古部屋に入ったら
こんな風に割れていて

、何でなんで・・・って。

宝石のお店に立っていると、
色んな話を聞くことが出来ます。

例えば

お葬式のバスの中で
数珠がバラバラと切れたり、

何もしていないのに
パラんとブレスレットが切れたり。

時には
家の中で絶対にここに置いたはずの

宝石がフッと消えて
無くなってしまったり。

そんな話を
何度が聞くうちに

宝石が身代わりになって
くれたんだなと
思えるようになりました。

先生が大切に
使っていた器。

お預かりして宝石を直す
接着剤で元の形に直しました。

身代わりに
割れてしまった器。

守ってくれてありがとう、と
たっぷりとつけて直しました。