最初は
お付きあいをしている
カップルかと思っていました。
男性が熱烈に、しかも一方的に
「貴方に宝石を買ってあげたい」と
熱心に女性を口説いています。
女性は
かわいい腕時計の上から
彼が選んだブレスレットをして
「もう、これ1つで十分だから。」といって
彼をなだめています。
彼はブレスレットの他にも、まだ
何かをプレゼントしたくて仕方なくて
自分が勧める指輪を
あれやこれやと出しては
着けた姿を誉めています。
話を一緒に聞いていると
お二人はご夫婦でした。
ご主人は普段から着飾らない奥さまに、
宝石をつけてお洒落をして欲しいと
思っている様子が伺えました。
ご主人の その押しの強いこと・・・
見ていて大丈夫かなぁと思うほど。
「いいから、これにして。
店員さん、包んで!」
ご主人が私にそう言い、
「わかったから。
好きだけど、今はいいから。」
奥さんがご主人に言い、
「彼女が納得しないと こちらも包めない。」
、と店員の私はご主人に言い・・・
そんなこんなの会話が
一時間ほど続きました。
「人の気持ちはこの指輪みたいに
表と裏があるけど
僕の気持ちは1つだけだよ。」
「君は全然飾ってくれない。
僕は、キレイなバラにも
リボンを巻きたいんだ。」
そんな言葉のシャワーが
続いて続いて続く中で彼女は
彼が選んで着けさせた指輪を
じっと見つめるようになりました。
「ほら、やっぱりその指輪が好きなんでしょ。似合うんだから、僕が君に買いたいんだ。 」
「わかった。ありがとう。」
最後にはにっこり笑って
彼からのプレゼントを受け取った彼女。
この時間。
まるで目の前で
役者さんが演じている舞台を
見ている様でした。
夫婦だと言葉と言葉で意志を伝えるのを
怠りがちだけれど
言いあわなければ
絶対にご縁がなかった宝石を持って
嬉しそうに帰っていく
お二人でした。
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