承る仕事の重さ

マラソン大会で
瀬戸の街が賑わった朝。

交通規制により
日本堂まで車が入ってこれず、

午前中は
一人のお客様もありませんでした。

その反動でありがたいことに
午後は大忙し✨

となり街からのお客様の
宝石のご相談。

私がお守りとして使っている指環と
作りからしてよく似たデザイン。

だからきっと
40年選手。

しかも
ずいぶんと使い込んでいて、

地金が耐えきれず
切れてしまっていました。

ここを直しても、きっと
次に隣が切れていくだろう・・・。

商品にも寿命があって、もう
限界ギリギリのリングでした。

聞けば、元々は
お客様のお母様のリング。

それを譲ってもらったお母様が
日日着けて、

今度は娘さんがそれを
譲り受けたという、

三代に渡って
愛されたリング。

考えるべきは
使用頻度に経年劣化のバランス。

方法は2つあって、

ひとつは
現状切れている部分だけを直す方法。

ただし、
寿命ギリギリなので、

本当に着けたい時だけ着けて、
使用頻度を減らして、負担を減らす。

もうひとつは、大手術。

裏側に一本、
新しい指環を足す位の勢いで補強して、

リング自体への
負担を減らす方法。

でもこれには
お金がかかり、

見た目も変わってしまう可能性があるので
お勧めしないと伝えました。

悩んだお客様は、
娘さんに電話をして相談しました。

「毎日、これを着けたい。」

これが
お嬢さんの答え。

同じ予算で
別の新しいリングが買える

、と伝えても、
このリングが良いのだそう。

あぁ、お守りなんだな・・・
とわかりました。

聞けば一人娘さんで
今は大学で外に出ているのだそう。

大切に育てられたお嬢さんが
里を離れて一人暮らしをして、

そんな中で
いつもリングを着けていたい

そういう気持ちが
伝わってきました。

まずは、そもそもお直しが
不可かもしれないことをお伝えして、

できるならば
見積もりを取るところからのスタートです。

やれるならなるべく
お客様の負担を少なく、と

あれこれ考えて、工房の先生と
これから相談していきます。

承ったお仕事の
重さを感じました。